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「だから、お盆には帰るよ」
テレビ電話の向こうでは、母親がムスッとした顔で俺を責めている。
お盆には帰るが、それはお墓参りが終わったら速攻こっちに帰ると言ったからだ。
「たまに帰省したならゆっくりしなさいよ!」
彼女はそういうけれど、俺には実家でゆっくりできる場所は無い。
それはあの家を出た時から、見えない結界に阻まれているように感じる不快感があるからだ。
友人達は地元大好きだ。
もはや愛だと言ってもいいだろう。
だが、俺には理解できない。したくない。
一箇所に縛られる事は、視界を遮られる。
楽しみも、そこでしか出会えない人との接触も、思いがけない苦しみも味わえないのだ。
なんてつまらない。
「とにかく、そういうわけだから、じゃあね」
相手の返事を待たずにテレビ電話を切った。
ニュースの流れる画面では、今日も暴動が起こっている。
これも一種の、一箇所に身も心も繋がれた人々の喜びと苦しみの風景なのだ。
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