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【みらいの約束】

 

流れで付き合うようになって、初めての冬。

俺は部屋の隅で膝を抱えながら、恨めしそうに睨んでくる篠乃目夏海を見ていた。

「前から約束してたんだから、しょうがないだろ」


そう言っても篠乃目は、ううーっ。と姿勢を崩さない。


「甥姪ちゃん達のことはわかるけど、オレだって安芸文さんとクリスマス一緒に遊べると思ったのに!」

「だからー」


姉の子供である二卵性双子は、赤ん坊の頃から遊んでやっている為か俺に懐いていて、小学生になった今でも、実家で会うとベタベタしてくるのだ。

その双子の父親が今年から海外に単身赴任してしまい、楽しみにしていたクリスマスにスキーに行く予定がダメになってしまった。

姉は、来年行けばいい。と窘めたが、あまりの落胆ぶりに俺が同伴してやると約束したのだ。

それが春のこと。篠乃目とのきっかけは夏。

 

「お前とは年末年始も一緒にいるし、クリスマスなら来年もあるだろ」


目線を外して独り言のように呟くと、篠乃目が素早く寄ってきた。


「うぉっ、近いよ」

「今の、忘れないから」


瞳をキラキラさせながら、見えない尻尾をぶんぶん振り回している。

思わず噴き出した俺が鼻先にキスをすると、篠乃目はお返しとばかりに唇に触れるだけのキスを返してきた。


「ぅおっしゃ! 安芸文さん、
25日には帰ってくるだろ? どっか行こう」

「は? 往復何時間運転すると思ってんだ」
「じゃあオレも一緒に行、」
「いらねぇよ」

圧し掛かろうとする体を、横になぎ倒した。



  

後日談



結局25日は夜の海を見に行って、大晦日は芸術館のカウントダウンライトアップを見た。

今年も来年も、よろしくな。と言った俺の手を握ってきた篠乃目の手は、いつも通りの心地良い温かさだった。


(座木安芸文)

 

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